基礎知識
作成日:2016.12.22
分筆とは、「登記簿上2つの土地に分けること」をいいます。(※対義語は合筆)
例えば、「甲土地が存在し、その土地を兄弟で分けて所有し利用したい」というような場合、甲土地を半分に分けてそれぞれ登記することで、独立した土地として扱われます。
※分筆登記がなされると、分筆された土地には新たな地番がつけられ、独立した土地として登記され、公図(地図)にも分筆した線が引かれ、新たな地番が記載されることになります。
※登記簿上の変更をせず、建築基準法を満たす机上の土地の線引きをすることを「分割」といいます。分筆は土地の分割とは異なり、分けられた2つの土地が登記上別々の土地になります。上記例でいうと、甲土地を単に兄弟で分け、それぞれで建物を建てて利用する場合が「分割」にあたります(実際に分筆登記はされません)。
なお、土地の面積が0.01平方メートル未満になる分筆は行うことができませんので、注意が必要です。
分筆と似た概念で、分割というものもあります。
分筆は登記簿上も別々の土地となることを指しますが、分割は登記簿上では分かれていません。ただ、土地に線引きがあるだけになります。
登記簿上の変更をせずに、建築基準法を満たす机上の土地の線引きを「分割」といいます。
まずは分筆のメリットについて見ていきましょう。
例えば、乙土地を担保(抵当権設定)に1000万円を借りたいという場合で甲土地の評価額が5000万円だったとします。1000万円借りるために、5000万円の土地に抵当権を設定するというのはもったいないですよね。
その場合、1000万円分の評価額に合わせて分筆登記をすることで、乙土地の一部を独立した土地とし、そこに抵当権を設定することができるようになります。
また、土地全体の地目が宅地の場合、一部を畑として利用したいと思っても、一部だけ畑に地目変更することはできません。その際土地を分筆すれば、畑として利用したい部分の地目を「畑」、その他宅地として利用したい部分を「宅地」として登記することができます。
逆も然りで、農地の一部を宅地として利用したい場合は、宅地部分のみを分筆し登記することで建物を建てることができますし、残りの農地はそのまま利用することができるようになります。
また、地目を宅地以外の「畑」や「田」とすることで、税金面の優遇が受けられる(安くなる)可能性が高くなります。
その他、土地の分筆の仕方によっても、土地の評価額が変わり、税金面が安くなる可能性がある点がメリットといえるでしょう。
※日当たりの良い場所や、道路に面しているか否か等で、その土地の評価は変わります。
次に、デメリットについて見ていきましょう。
分筆をすると、土地の使い勝手が悪くなってしまう場合があります(道路に面さない形になってしまう等)。
また、分筆し地目を畑に変更してしまった場合、新たに建物を建てられなくなってしまいます。
何より、分筆にかかる手間(費用や時間)はデメリットと言わざるを得ません。
次は、実際に分筆をする流れについて見ていきましょう。
分筆は大きく分けて、土地の調査→測量→登記申請という流れで行っていきます。
自身で測量を行い、図面を作成し、登記申請を行えば安く済むとお考えの方もいるかもしれませんが、測量には専門的な知見が必要になるため、自力で行うのは非常に難しいものです。
また分筆の登記申請には、申請書、筆界確認書、地積測量図、現地案内図等の書類を用意する必要があり、非常に手間がかかります。専門家に依頼すれば、このあたりの書類も全部用意してもらえますので、お困りの際はまず専門家に依頼する方がよいでしょう。
土地の測量や手続き等を踏まえると、2週間~半年程度かかるケースが多いです。
期間の幅が長いのは、境界線画定の測量が済んでいるか否かで大きく変わるためです。済んでいる場合であれば、数週間で終わりますが、済んでいない場合だと、数ヶ月かかってしまうケースもあります。
分筆のための費用は、①土地調査費用、②登記申請費用の2つに分けられます。
土地広さや形状等にもよりますが、目安は下記の通りです。
・測量費:10万円程度~
・筆界確認書作成費:10万円程度~
・官民境界確定図作成費:10万円程度~
・境界標設置費:10万円程度~
・登記申請費:5万円程度~
・登録免許税:分筆後の筆数×千円
過去に測量した業者に任せることや登記申請を自身で行うことで、数万円程度費用を安くすることができますが、登記申請、特に分筆はそう多くあることでもないため、専門家の中でも経験がない者もいます。
やはり熟練した専門業者に依頼することをおすすめいたします。
不動産、特に土地を相続する場合に、共有状態を避けるため、遺産分割協議で土地の分け方を決め、それに応じて分筆することがあります。
分筆登記をするには、すでに述べたように現地調査や必要書類を用意する必要があり、場合によっては、数ヶ月の時間を要します。
その場合に注意しなければならないのが、「相続税の申告期限との関係」です。
相続税は、相続開始を知った日の翌日から「10か月」の間に申告しなければなりません。
相続税の申告期限までに遺産分割協議が終わらなかった場合は、法定相続分に応じて申告・納付をすることになります。その後(申告期限後)に、法定相続分と異なる遺産分割が行われてしまった場合には、相続税の修正申告をしなければなりません。
1度に分筆登記を行えば、費用と時間を節約することができるため、申告期限が過ぎる前に分筆を行うことをおすすめします。
相続後に遺産分割協議などによってすでに共有状態にある土地を分筆する際、分筆をするだけでは共有状態は解消されません。仮に3名共有名義のA土地をa、b、c地の3筆に分筆しても、引き続き3名の共有状態は解消されませんので、分筆登記手続きと同時に各土地を、各自の単独名義に移転することを忘れないように注意しましょう。
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