遺産分割後の無断譲渡

   

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作成日:2016.11.14

遺産分割後の無断譲渡

コンテンツ番号:1492

alt遺産分割後の無断譲渡

Aには子BCがいました。Aは亡くなり、子BCが相続人となりました。甲土地を共同相続しましたが、Cが勝手に甲土地全部登記し、Dに売ってしまいました(Dに登記移転済み


Bさんは自己持分を取り戻せるでしょうか(共同相続した場合の問題)また、遺産分割でBさん単独所有になったにもかかわらず、甲土地をDに勝手に売ってしまった場合はどうでしょうか(遺産分割後の無断譲渡)

alt遺産分割後の無断譲渡

共同相続の場合Bは登記無くして自己の持ち分を対抗(主張)することが出来ます。しかし遺産分割「後」の場合、Bは登記を備えていないとDに対し対抗することは出来ません。

1、共同相続後、無断処分した場合

Cが行った登記はBの持ち分に関する限りは、無権利の登記になります。

登記に公信力(登記上の表示を信頼して不動産の取引をした者は、たとえ登記名義人が真実の権利者でない場合でも、一定の要件の下で、その権利を取得することが認められるとする効力)はないため、その者から譲渡を受けた第三者のDはBの持ち分を有効に取得することが出来ず、Bの持ち分に関してDは無権利と言えます。

したがって、Bは登記無くして自己の持ち分をDに対抗することが出来る結果、Dは登記があっても甲土地全部につき、完全な所有権を取得することが出来ません。

♦【最判昭38年2月22日】

「…相続財産に属する不動産につき単独所有権移転の登記をした共同相続人中の乙ならびに乙から単独所有権移転の登記をうけた第三取得者丙に対し、他の共同相続人甲は自己の持分を登記なくして対抗しうるものと解すべきである。けだし乙の登記は甲の持分に関する限り無権利の登記であり、登記に公信力なき結果丙も甲の持分に関する限りその権利を取得するに由ないからである。」(※「けだし(蓋し)」とは、「思うに」という意)

2、遺産分割「後」相続財産の処分

民法909条:「遺産の分割は、相続開始の時にさかのぼってその効力を生ずる。」

とあり、遺産分割の効力は相続開始時にさかのぼります。

一方、

民法898条:「相続人が数人あるときは、相続財産は、その共有に属する。」

とあり遺産分割が終了するまでは相続財産は共有になります。

そのため、事例Q②だとA(被相続人)の死亡から一旦共有状態(BCの共有)があっても、遺産分割協議が終了すると相続開始時(A死亡時点)からBの単独所有であったことになります。

遺産分割終了前にCの持ち分であった部分については、確かに民法909条本文によると遺産分割は遡及効を有するので、Dは無権利者Cからの譲受人ということになり、Bは登記が無くても対抗できそうです。

しかしながら、相続財産は相続開始によりいったん相続人の共有となり(民法898条)、共同相続人間の協議を経て最終的なその権利の帰属が決定されることになります。

これは、第三者に対する関係でみると、相続人が相続により一旦取得した権利につき、分割時に新たな変更が生ずるのと実質的には同一です。

不動産に対する相続人の共有持ち分の遺産分割による変更については177条の適用があるため、遺産分割により相続分と異なる権利を取得した相続人は、その登記を経なければ、分割後に当該不動産につき権利を取得した第三者に対して、取得した持ち分を対抗できません。

民法177条:「不動産に関する物権の得喪及び変更は、不動産登記法 (平成十六年法律第百二十三号)その他の登記に関する法律の定めるところに従いその登記をしなければ、第三者に対抗することができない。」

※不動産に対する相続人の共有持分の遺産分割による変更が「不動産に関する物権の得喪及び変更」に当たるということです。

本事例では「不動産に関する物権の得喪及び変更」があったにもかかわらずこれを怠っているBは、Dに自己の持ち分を越えて対抗することは出来ません。

♦【最高裁昭和46年1月26日】

遺産の分割は、相続開始の時にさかのぼつてその効力を生ずるものではあるが、第三者に対する関係においては、相続人が相続によりいつたん取得した権利につき分割時に新たな変更を生ずるのと実質上異ならないものであるから、不動産に対する相続人の共有持分の遺産分割による得喪変更については、民法一七七条の適用があり、分割により相続分と異なる権利を取得した相続人は、その旨の登記を経なければ、分割後に当該不動産につき権利を取得した第三者に対し、自己の権利の取得を対抗することができないものと解するのが相当である。・・・」

としています。

遺産分割が終わって自己の持ち分が決定し、いつでも登記できる状態にあったにも関わらず、登記を怠っている者を保護する必要性はそこまで高くない(取引の安全性)という考えが背景にはあります。

3、関連論点:相続放棄の場合

例えば相続人B・ⅭがいてⅭが相続放棄したが、第三者Ðが甲土地のCの持ち分につき差し押さえをした場合。

民法939条:「相続の放棄をした者は、その相続に関しては、初めから相続人とならなかったものとみなす。

とあり、相続の放棄は相続資格を喪失することになります。

相続をめぐる法律関係が錯綜するのを防止するためにその効果を一律遡及させることにしています。

また、

民法938条:「相続の放棄をしようとする者は、その旨を家庭裁判所に申述しなければならない。」

とあり、放棄の有無は家庭裁判所で調査することができますし、放棄があった時点で終局的に相続財産の帰属が決定するわけではありません。

そのような場合にまで、相続人に登記を要求するのは酷とも言えます。

よって、相続放棄の場合には放棄により単独所有となった者は登記無くして、その所有権を第三者に対抗することが出来ます。

Ⅽの相続放棄により単独所有となったBは登記無くしてDに対抗することが出来ます。

♦【最高裁昭和42年1月20日】

「民法939条の…「放棄は、相続開始の時にさかのぼつてその効果を生ずる。」の規定は、…相続人の利益を保護しようとしたものであり、同条所定期間内に家庭裁判所に放棄の申述をすると(同法九三八条)、相続人は相続開始時に遡ぼつて相続開始がなかつたと同じ地位におかれることとなり、この効力は絶対的で、何人に対しても、登記等なくしてその効力を生ずると解すべきである。」

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