事例でわかる!不動産「共有持分」の売却について

⑤共有不動産の「持分」を放棄する際のメリットとデメリット

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前回は、共有不動産の「持分」を売却できない典型的なケースを紹介しました。今回は、共有不動産の「持分」を放棄する際のメリットとデメリットについて見ていきます。

タダで渡すことに抵抗感!? 活用例が少ない「放棄」

【共有名義を解消する方法(5)持分放棄】自己の持分を放棄する

(5)持分放棄とは、共有者の1人が自己の持分を放棄することです。民法255条では「共有者の1人が、その持分を放棄したとき、又は死亡して相続人がないときは、その持分は、他の共有者に帰属する」と持分放棄について定めています。他の共有者の承諾や同意は不要で、「持分を放棄したい」と思う人は自分の意思だけで実行することができます。共有名義不動産の持分を放棄した場合、この条文に示されているように、放棄された持分は他の共有者に帰属します。また、他の共有者が複数人いる場合には、各自の持分の割合に従って放棄された持分が分配されることとなります。

たとえば、甲土地をX、Y、Zの3人が共有しており、それぞれの持分が3分の1ずつの場合に、Zが持分を放棄したとします。この場合、X、YにはZの持分が半分ずつ、つまり6分の1ずつ分配されることになります。その結果、X、Yの持分はそれぞれ「3分の1+6分の1=2分の1」となります。

また、持分放棄の登記に関しては、「持分放棄を登記原因とする所有権移転登記」を申請することになります。この例でいえば、ZからX、ZからYに持分が移転した旨の移転登記を行うことになるわけです。

したがって、持分の放棄自体は単独で行うことが可能ですが、その登記については他の共有者の協力が必要になります。

持分放棄は、自分の持分を他の共有者にタダで与える行為であることから、「持分をタダで失うのはいやだ。何がしかの対価がほしい」という場合には、トラブルを解決するための選択肢から外れることになるでしょう。実際、一部売却や持分移転、持分買い取りに比べると、共有関係を解消する手段として持分放棄はあまり活用されていないように思われます。

ただ、共有している不動産が農地であれば、持分放棄に特別なメリットを見いだせるかもしれません。農地の持分を移転するには、農地法上の許可が基本的に必要になりますが、持分放棄の場合には許可が不要なのです。したがって、「面倒な許可手続きを経ずに農地の持分を手放したい」というような場合には、持分放棄を検討してみるとよいかもしれません。

 

1つの土地を2つ以上の土地に分ける「分筆」

【共有名義を解消する方法(6)土地の分筆】1つの土地を登記簿上2つ以上の土地に分ける

 

共有名義となっている不動産が土地の場合には、(6)土地の分筆も選択肢になります。分筆とは、1つの土地(一筆の土地)を登記簿上2つ以上の土地に分けることをいいます。分筆された土地には新たな地番が付けられ、独立した土地として登記されることになります。共有名義不動産を共有者全員で分筆する場合には、結果的に第一章で触れた現物分割を行ったのと同じことになります。ちなみに、その逆の行為、すなわち隣接する数筆の土地を一筆の土地に法的に合体することは「合筆」といいます。

第二章で取り上げた【事例4】姉が持分比率以上の権利を要求してきた例では、Dさんの姉がこの分筆を求めてきました。姉の要求は持分比率以上の広さの土地を求めるものであったため、Dさんはもちろん拒みましたが、姉の強欲ぶりにうんざりしたため「共有関係を解消したい」と自分の持分を第三者に売却することを決めました。

その後、Dさんから持分を購入した投資家が、Dさんの姉に対して共有物の分割請求を行いました。その結果、最終的に土地は投資家とDさんの姉との間で2分の1ずつ分筆されることになりました。

なお、共有状態を解消する手段として用いられる以外に、土地の分筆が行われるケースとしては以下のような場合があげられます。

①土地の一部を売買する場合

②土地の一部の地目が異なる場合

③融資を受けて家を建てる際に、利用しない土地を分ける場合

 

>>次の記事 ⑥共有する土地の「分筆」・・・持分割合に応じた調整の進め方を読む

>>前の記事 ④共有不動産の「持分」を売却できない典型的なケースとは?を読む

本記事は、2017年5月26日刊行の書籍『あぶない!!共有名義不動産』から抜粋したものです。稀にその後の税制改正等、最新の内容には一部対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

 

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