相談事例
作成日:2019.07.08
コンテンツ番号:476
甲土地の共有持分の整理を考えております。 状況は下記になりますが、良い解決方法はありますでしょうか。
<詳細> ①父親Bが2015年に亡くなりました。 相続財産は甲土地(埼玉に約100坪)の持分2分の1です。
母親Aと父親Bが甲土地について、2分の1ずつ共同所有していました。 ABの子ら(CDE)はこの段階で、12分の1ずつ(2分の1×2分の1×3分の1)甲土地に対しての持分があります。
②母親Aが昨年(2018年)に他界しました。 母親Aは遺言書を残しており、「3女であるEに甲土地の共有持分である2分の1を相続させる」旨の内容でした。
③私は次女Dですが、いろいろと面倒になりそうなため、自己の持分である「12分の1」を売却できないか考えています。 何か良い方法はありますか。
まず、共有持分のみでの売却自体は可能です。
他でも何度も解説しておりますが、買い手さえつけば、他の共有者の同意なくして、単独で売却できます。
売却する際は、専門業者に依頼することになると思います。
その中には、買取業者、仲介業者と大きく分かれます。買取業者の場合は値段をできるだけ安く買い、高く転売することで利益を出します。
一方、仲介業者はあくまで仲介という客観的立場で売却に関与するため、比較的高く売却することができます。
最近、買取業者にも関わらず、「当社は仲介業者です」というように謳っている業者もいます。
また、「買取を即決します」等とも…
このような業者には気を付けてください。
売却を検討する際は、何社かの業者に相談し、比較検討してからの売却を推奨いたします。
さて、本件のⅮは自己の共有持分である12分の1を売却したいと考えているとのことですが、Ⅾの共有持分は12分の1なのでしょうか。
母親Aの死亡により、甲土地の持分が増える可能性があるのではないか、より具体的に言うと、母親の遺言書(3女Eに相続させる旨)がありますが、遺留分との関係を考慮すると、Ⅾの持分は増えるのではないかということです。
※遺留分とは、「相続人に法律上確保された最低限度の財産」のことです。
例:亡き父親が婚外子に対して財産を全部贈与する旨の遺言書がある場合、他の相続人にも最低限の遺留分があるということです。
(遺留分の放棄)
民法1043条1項:「相続の開始前における遺留分の放棄は、家庭裁判所の許可を受けたときに限り、その効力を生ずる。
同条2項:「共同相続人の一人のした遺留分の放棄は、他の各共同相続人の遺留分に影響を及ぼさない。
なお、遺留分の放棄もできますが、相続開始前に遺留分を放棄させる場合には、家庭裁判所の許可がいることになります。」
具体的に遺留分の算定方法は民法に規定があります。
(遺留分の帰属及びその割合)
民法1028条:「兄弟姉妹以外の相続人は、遺留分として、次の各号に掲げる区分に応じてそれぞれ当該各号に定める割合に相当する額を受ける。
一 直系尊属のみが相続人である場合 被相続人の財産の三分の一
二 前号に掲げる場合以外の場合 被相続人の財産の二分の一」
本件では相続人は、母親の実子のCDEのため、民法1028条2号に該当します。
そうすると、本件のDの遺留分は…
<遺留分>
4分の3(母親財産)×2分の1(遺留分)×3分の1(子の数)=8分の1
<遺留分考慮後の共有持分>
12分の1(現状の持分)+8分の1(遺留分)=24分の5
よって、甲土地については24分の5の権利を有し、12分の1ではなく、24分の5の共有持分を売却できる可能性があります。
具体的な手続き等は、専門的な知識がいります。
専門家への相談をおすすめします。
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