相談事例
作成日:2019.07.01
コンテンツ番号:473
父親Aが20年前に死亡後、父親の財産をB(母親)、C(私・実子)、D(弟・実子)で相続しました。
※相続財産の甲土地について、3分の2は、BCの共同所有、3分の1をCDの共同所有という形となっております。
Dは企業をしていましたが、事業に失敗しています。
実は、当初より、甲土地に関して、所有権を主張しないことが条件だったので、父親Aが亡くなってから、甲土地に関する固定資産税の支払いを一切していません。
本題はここからです。 弟Dは倒産や借金返済の生活苦から、生活保護を申請しようとしましたが、役所の担当者から、「甲土地があるため、生活保護は受けられない」と言われているそうです。
弟からは何とかならないか、と言われております。
上記のように固定資産税等一切支払っていない弟が所有権の主張をするのはおかしいと思います。
弟は行き詰っていると思うので、共有持分を変な人に売却する等、何をするかわからず不安で仕方ありません。
何か良いアドバイスはありませんでしょうか。
ニュースでもよく問題になる生活保護…
そもそも、「生活保護」とは何か解説していきます。
「生活保護」とは、「資産や能力等すべてを活用してもなお生活に困窮する方に対し、困窮の程度に応じて必要な保護を行い、健康で文化的な最低限度の生活を保障し、その自立を助長する制度」を言います。
(■参照:厚生労働省HP:
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/seikatsuhogo/seikatuhogo/index.html)
憲法や生活保護法という法律でも以下のように規定されています。
憲法25条:「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。」
(保護の補足性)
生活保護法4条1項:「保護は、生活に困窮する者が、その利用し得る資産、能力その他あらゆるものを、その最低限度の生活の維持のために活用することを要件として行われる。」
同条2項:「民法(明治二十九年法律第八十九号)に定める扶養義務者の扶養及び他の法律に定める扶助は、すべてこの法律による保護に優先して行われるものとする。」
とあります。
「健康で文化的な最低限度の生活」という言葉は耳にした方も多いかもしれません。
働きたくても働けないそのような人たちを援助し、生活を守る(保護する)ことが生活保護の趣旨です。
一方で、国民には勤労の義務もあります。
働けるのに働かない人、財産がちゃんとある人にまで、国が援助する必要はありません。そうでなければ、真面目に働いている人は嫌になってしまいます。
そこで、生活保護法4条では生活保護制度が利用できる条件について定め、条件を満たさない限りは、生活保護は受けられないようにしています。
生活保護法4条にもありますが、①資産の活用、②能力の活用、③あらゆるものの活用、④扶養義務者の扶養をして、それでもだめだった場合の最終手段として生活保護を利用してくださいということです。
具体的には…
①資産の活用
預貯金、生活に利用されていない土地・家屋等があれば売却等し生活費に充てる。
②能力の活用
働くことが可能な人は、その能力に応じて働く
③あらゆるものの活用
年金や手当等他の制度で給付を受けることができる場合は、まずそれらを活用する
④扶養義務者の扶養
親族等から援助を受けることができる場合は、援助を受ける
本件の場合、土地がある並びに他の扶養義務者もいるため、税金の納付如何に問わず、現状で生活保護を受けるのは難しいと考えられます。
解決策としては、持分を売却し、それでも生活が苦しいなら生活保護を申請するという形を推奨いたします。
なお、本件では、税金を全く支払っていないため所有権がない等と主張をしていますが、税金と所有者は関係なく、残念ながら弟にも持分割合の所有権があることになります。
1、でも述べましたが、財産がある場合には、生活保護を受けることはできません。
そこで、まずは、共有持分の売却をさせ、現金を手に与えさせることを考えましょう。
そのうえで、生活が苦しくなった場合に、改めて生活保護を申請する。その時には断られた理由の一つの「土地がある」という点はクリアできているはずです。
共有持分を変な人に売るよりも、他の共有者が買い取ることも一つの手段と言えます。
それができない、不満なのであれば、専門業者を通じて売却するしかないのですが、その際は、弟が勝手に動く前に一緒に業者を探すとよいでしょう。共有不動産の自己持分を現金化(売却)するメリット・デメリットとは?
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