相談事例
作成日:2019.06.03
まず分筆とは、「登記簿上2つの土地に分けること」をいいます。※対義語は合筆
一筆の土地を、2つ、3つに分けて、別々に登記をする形です。
どんな土地でも分筆ができるという訳ではなく、土地の面積が0.01平方メートル未満になる分筆はできません。また市街地調整区域では、一定の面積以下への分筆が制限されている場合があるので注意が必要です。
分筆がなされるとそれぞれが独立した土地として、新たな地番が付与されます。
分筆と似た概念で、分割というものもあります。
分筆は登記簿上も別々の土地となることを指しますが、分割は登記簿上では分かれていません。ただ、土地に線引きがあるだけになります。
登記簿上の変更をせずに、建築基準法を満たす机上の土地の線引きを「分割」といいます。
さてここからは、分筆のメリット、デメリットについて見ていきましょう。
①異なる地目で登記可能
分筆をすれば、分かれた土地毎に異なる地目を登記できるようになります。
例えば、農地に家を建てたいという場合に、宅地部分と農地部分を分筆し、独立した土地として登記をすることができます。
②異なる権利関係の登記が可能
原則1つの登記された土地の中で所有者を分けることはできません。抵当権なども土地全体に対して設定されます。
しかし土地全体を抵当に入れなくても十分に担保ができるような場合、土地の一部を分割して独立した土地として登記を行うことで、その部分にだけ抵当権を設定することができるようになります。
土地の分け方によっては、評価額が低くなるので、税金面が安くなる可能性もあります。
分筆のデメリットとしては、土地が狭くなるため、使い勝手が悪くなったり、上記とは逆に税金が高くなってしまったりする場合があるという点です。
何より、分筆する手間や費用が掛かってしまうことが最大のデメリットといえるでしょう。
それでは、分筆はどのように進めていくのでしょうか。
実際の流れを見ていきましょう。
・土地家屋調査士に依頼
・法務局・役所で調査
・現地予備調査
・境界確定測量
・分筆案の作成
・境界標の設置
・登記書類の作成
・登記申請
大きくはこのような流れになります。
基本的には土地家屋調査士に相談すれば詳細の流れも教えてくれるはずです。
なお分筆の登記は、その土地を管轄する法務局、地方法務局に申請することになります。
申請に必要な書類は下記になります。
・申請書
・筆界確認書(境界確認書、境界の同意書、境界の協定書)
・地積測量図
・現地案内図
※(司法書士等を利用し、代理申請の場合)代理権限証書(委任状)
分筆までにかかる期間は2週間~3,4か月程度です。
期間に幅があるのは境界線画定測量が済んでいるか否かによって、その期間が異なるためです。
境界線画定測量が済んでいる場合は2週間~1か月程度、済んでいない場合は1か月~4か月程度の期間を要します。
・測量費:10万円程度~
・筆界確認書作成費:10万円程度~
・官民境界確定図作成費:10万円程度~
・境界標設置費:10万円程度~
・登記申請費:5万円程度~
・登録免許税:1,000円/1筆
測量等は技術的な知見が必要です。登記申請などは自分で行える可能性もありますが、基本的には専門家に依頼する方がいいでしょう。
自分でやってみたものの間違っており、結局業者に依頼…それでは2度手間になってしまいます。
過去に同じ土地を測量したことがある業者がいれば、そこに依頼すると費用は安くしてもらえる可能性もあります。
共有状態の相続登記をしてから分筆をしてしまうと、手間(費用と時間)がかかります。相続登記をせずに分筆登記を行えば、手間を少なくすることはできますが、やはり一定程度の時間を要します。
相続で発生する税金の相続税の申告期限は、相続開始を知った日の翌日から「10か月」となっており、分筆して登記すると期間的に間に合わないという可能性もあります。
相続登記をせず、分筆登記をする可能性がある場合には、まず測量だけでも済ませておくと、いざ分筆となった場合でも素早く対応ができます。
なお、相続税の申告期限までに遺産分割協議がまとまらなかった場合には、法定相続分に応じて相続税の申告・納付をすることになります。
しかしその後、法定相続分と異なる遺産分割が行われた場合は、不足・超過した相続税の更正の請求を行わなければならず2度手間になってしまいますのでご注意ください。
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