相談事例
作成日:2017.10.17
共有持分の交換とは、共有者同士でその所有する持分を交換し、共有状態を解消する方法をいいます。
「交換」とは、物々交換のイメージです。
民法第586条
2 当事者の一方が他の権利とともに金銭の所有権を移転することを約した場合におけるその金銭については、売買の代金に関する規定を準用する。
交換は、当事者が互いに金銭の所有権以外の財産権を移転することを約することによって、その効力を生ずる。
例えば下記のような形で共有持分を持っている兄弟が共有状態を解消したいと思っているとしましょう。
この場合、甲アパート、乙アパートの兄弟の持分がそれぞれ移動できれば、甲アパートも乙アパートも単独で所有することができるようになります。
それぞれの共有持分部分の評価額がほぼ同様の場合は、そのまま交換することができるでしょう。(例:甲アパートは兄の単独所有、乙アパートは弟の単独所有とする)
一方で、それぞれの持分の評価額に差がある場合であっても、差額を金銭で提供することで交換の交渉をすることができます。例えば兄の持分の方が評価額が高い場合、弟は兄に差額分の金銭を支払うことで持分を交換することができます。逆もまた然りです。
差額が大きくあるにもかかわらず金銭の授受がない場合には、贈与税がかかってしまう可能性もあるため、注意が必要です。
※譲渡取得税や交換の特例については後ほど解説します。
当事者同士で費用等の話し合いがまとまると登記手続きに移ります。
登記は司法書士事務所に相談し、対応してもらうケースがほとんどです。
交換する当事者同士で、対象不動産両者について、所有権移転登記手続きをします。
10日程度あれば完了するケースが多いです。
下記書類を用意する必要があります。
・登記事項証明書
・権利証または登記識別情報
・印鑑証明書(発効日から3ヶ月以内)
・印鑑(実印)
・住民票写し
・固定資産評価証明書
②の必要書類手配のための手数料に加え、司法書士報酬、登録免許税がかかってきます。
司法書士報酬の価格は事務所によって異なりますが、10万円程度~が多いようです。
登記手続きは自身でも可能ですが、間違いがあってはいけませんので、やはり専門家に依頼することを推奨いたします。
持分を交換する際は、譲渡所得税という税金についても考慮しなければなりません。
ただし次の要件を満たしている場合には、「固定資産の交換特例」が適用され、譲渡取得税の課税対象にはなりません。
<国税庁よくある税の質問No.3502 土地建物の交換をしたときの特例>
①交換により譲渡する資産及び取得する資産は、いずれも固定資産であること。
不動産業者などが販売のために所有している土地などの資産は、特例の対象になりません。
②交換により譲渡する資産及び取得する資産は、いずれも土地と土地、建物と建物のように互いに同じ種類の資産であること。
「土地と土地」または「建物と建物」のように、同じ種類の不動産の交換ではない場合、特例の対象になりません。※この場合、借地権は土地の種類に含まれ、建物に附属する設備及び構築物は建物の種類に含まれます。
③交換により譲渡する資産は、1年以上所有していたものであること。
④交換により取得する資産は、交換の相手が1年以上所有していたものであり、かつ交換のために取得したものでないこと。
⑤交換により取得する資産を、譲渡する資産の交換直前の用途と同じ用途に使用すること。
土地の場合は、宅地、田畑、山林、鉱泉地、池又は沼、牧場又は原野、その他に区分されます。
建物の場合は、居住用、店舗又は事務所用、工場用、倉庫用、その他用に区分されます。
⑥交換により譲渡する資産の時価と取得する資産の時価との差額が、これらの時価のうちいずれか高い方の価額の20%以内であること。
持分交換については、双方の不動産の時価の差額が20%以内であることが必要で、それには土地の適正な時価評価が重要になります。
参考:国税庁ホームページ
https://www.nta.go.jp/m/taxanswer/3502.htm
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