相談事例
作成日:2017.04.28
コンテンツ番号:2390
Aは遺言により愛人Cに対して甲マンションを遺贈しました。妻であるBは自己の遺留分を侵害するとして遺留分減殺請求をCにしようと考えていますが、できれば、現物(土地)を返還されるよりは現金を手にしたいと考えています。そのようなことは可能でしょうか?
できる場合があります。
遺留分減殺請求とは、自己の遺留分を侵害された遺留分権利者及びその承継人は、自己の遺留分を保全するのに必要な限度で、贈与や遺贈などの減殺を請求することができる権利です。
民法1042条:「減殺の請求権は、遺留分権利者が、相続の開始及び減殺すべき贈与又は遺贈があったことを知った時から一年間行使しないときは、時効によって消滅する。相続開始の時から十年を経過したときも、同様とする。」
法定相続分よりも多くの財産を承継している法定相続人に対して,遺留分に当たる部分を渡すように請求することになります。
※遺留分減殺請求権の法的性質は形成権であり、被相続人から受遺者への遺贈・贈与は現在請求の意思表示によって遺留分を侵害する限度で当然に失効するとともに、受遺者または受贈者が取得した権利はその限度で、当然に遺留分権者に帰属することになります。
上記のように遺留分を侵害された相続人は、遺留分減殺請求権を行使でき、受遺者などが取得した権利は遺留分を侵害する限度で失効し、遺留分権利者に復帰することになります。
そうすると、遺産が不動産の場合、遺留分権利者と受遺者は当該不動産について共有関係になります。
事例ですと妻Bと愛人Cの共有関係になります。
共有の解消を求める場合、遺留分権者は裁判所に、遺留分減殺を原因とする持分移転登記を求めることになります。
ここで受遺者などが、 価額弁償を主張(相当の金銭により賠償しますとの主張)すると、遺留分権利者の権利は、金銭債権に変わります。
共有関係になると持分を有する者はその全部につき利用する権利を持つことになります。
事例の場合妻Bも甲マンションを利用することができるようになります。
当然Bとしては愛人Cが住んでいるマンションを利用することはないでしょう。
そこで、Bとしては甲マンションの共有物分割訴訟を提起し、自己の持分を取得することを考えることになるでしょう。
共有物の分割は当事者(原告被告)が競売による換価を求めていなくても、裁判所が競売による共有の解消を命じることがあります。
判決により競売となるとマンションに住んでいる愛人Cは出て行かなければならなくなるため、相当の金銭を交付する(価格賠償による共有物分割)ことによって、妻Bは現金を得られる可能性は高くなります。
また遺留分相当額を用意できない場合でも競売になることを避けようと考えれば不動産を共同売却して遺留分相当額を支払って貰うことができます。
このように遺留分減殺請求はうまく共有物分割請求を組み合わせることによって効果的に遺留分相当の金員を取得することができます。
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