相談事例
作成日:2018.01.09
共有持分の最大のポイントは所有者が複数いることで権利関係の調整がしにくく、複雑化しやすいという点です。それではそのリスクを個別にみていきましょう。
まず、共有物の全部を処分したいと思っても、自分のみの判断ではできず、他の共有者の同意、それも、全員の同意が必要になってしまいます。
(共有物の変更)
民法第二百五十一条 各共有者は、他の共有者の同意を得なければ、共有物に変更を加えることができない。
自己の共有持分のみの売却であれば他の共有者の同意は不要ですが、売却価格はどうしても低くなってしまいがちです。
また共有物の管理行為に関しても過半数の同意がないと行うことができません。
一方で保存行為に関しては、各共有者が単独で行うことができます。逆に言えば他の共有者が勝手に保存行為を行ってしまう可能性もあるということです。
(共有物の管理)
民法第二百五十二条 共有物の管理に関する事項は、前条の場合を除き、各共有者の持分の価格に従い、その過半数で決する。ただし、保存行為は、各共有者がすることができる。
また、共有持分を有していると、急に分割請求を受けたり、訴訟に巻き込まれてしまったりする可能性があります。
共有持分については、いつでも他の共有者に対して分割請求を行うことができ、相手が分割請求に応じない場合には、共有物分割請求訴訟を提起することができるのです。
(共有物の分割請求)
民法第二百五十六条 各共有者は、いつでも共有物の分割を請求することができる。
(裁判による共有物の分割)
民法第二百五十八条 共有物の分割について共有者間に協議が調わないときは、その分割を裁判所に請求することができる。
最後に、一つの物に複数人が関係しているため権利関係が複雑になります。
例えば、1つの土地をAとBが共同所有していたとしましょう。この時点では、まだ2人の共有関係にすぎませんが、Bが亡くなり相続が起きて、Bの子ら3人が共同相続したとすると、AとBの子ら3人での共同所有という形になり、共有関係者は4人になってきます。さらにAが亡くなり相続が起きると…共有関係者はさらに多くなってしまいます。
二次相続、三次相続が起きていくと、どんどん共有関係者が増えていってしまう可能性が高まるのです。
そのため、いざ共有物を処分したいと思っても、何人もの共有者に確認して同意を得なければなりません。誰か1人でも連絡が取れない場合は、より面倒な手続きを踏まなければならなくなります。
共有持分を持っていれば、その共有物に対して全ての権利を行使することができますが、一方で権利関係が複雑なことも多く、いつ面倒なことに巻き込まれるかわからないというリスクもあります。
相続の場合は、自らが望んでいなくても気が付いたら共有状態だったということもあり得るため、次はそのリスクを回避する方法について見ていこうと思います。
共有持分のリスクを解消するには、そもそもの共有状態を解消する他ありません。
共有分割の方法は大きく、
①現物分割
②代償分割
③換価分割
に分かれます。
現物分割とは、共有物を現実に分割してしまう方法です。
例えば土地の場合であれば、持分割合に応じてその土地を分割(分筆)することで、共有を解消することができます。
ただ共有物が家屋の場合、この方法は難しくなるため、他の方法を考えなければなりません。
代償分割とは、共有物を誰か一人の単独所有にするかわりに、相当の金銭を支払うことで、共有を解消する方法です。買い取ってくれる共有者の資力がポイントとなるでしょう。
換価分割とは、共有物全てを売却し、売却で得られた金銭を持分割合に応じて分割する方法です。
よく使われる方法ではありますが、共有者の一人が保有を希望する場合は用いることができません。
①~③の方法はすべて他の共有者の同意がなければできないため、共有者の同意が得られそうにない場合は、また別の手段を考えざるを得ません。
そこで出てくるのが、自己の持分のみを第三者に売却する方法です。自己の持分のみであれば、他の共有者の同意なくして売却することができます。
ただ共有不動産を売却する場合、専門業者を利用することは必須と考えておいた方がよいでしょう。
共有不動産は不動産の中でも特に専門的知識や経験が必要な分野になるため、知見の深い専門業者へ依頼した方が高値で売却できる可能性が高まります。
また売却の他に、自己の持分を放棄するという方法もありますが、第三者へ売却して金銭を得る方が得策といえるでしょう。
共有状態はできるだけ発生しないようにする、もし発生してしまってもできるだけ早く解消することがリスクを高めない大きなポイントです。例えば遺産分割をする際も、「法定相続分に応じて共同相続しよう」といった分割はできるだけすべきではありません。
持分のみを売った方がよいケースとは?
共有持分はできる限り一括で処分(売却)すべきですが、下記のような場合は共有持分のみでも売却した方がよいでしょう。
① 話し合いがまとまらない場合
不動産の売却を意固地になって反対する者がいる場合、外国や地方同士でなかなか話し合いができる機会がない等
② 早急に資金を調達したい場合
話し合いがまとまるのを待っていられないほど早急に資金が必要な場合は、共有持分のみを売却すべきです。
共有持分を売却した後の法律上の取り扱いとは?
自己の共有持分のみを無事売却できたとすると、買受人と既存の各共有者とで共有関係になります。各共有者は共有物の全部について使用することができますが、第三者である買受人は不動産を利用することはまずありません。賃料相当の対価の請求をしてくることが通常です。
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